文責:田畑千尋(2024年度D3)

近年,低炭素社会の実現に向け,ジェットエンジンや発電用ガスタービンは燃焼ガス温度を上げ,熱効率の向上を図っています.そのため,既存の高圧タービン翼材には高温での機械的特性や耐酸化特性に最も優れたNi 基単結晶超合金が使用されています.しかし,作製時や使用時に混入した ppm オーダーのSなどの極微量不純物が酸化被膜の密着性を低下させ,耐酸化性が低下することが問題視されています.さらに,Ni 基単結晶超合金には原産量の少ない希少元素が数多く含まれているため,コスト削減方法やタービン翼材の再利用方法の要求も高まっています.

本研究班は,使用済みタービン翼材をCaOるつぼにて再溶解し,不純物除去を行うことで再利用を可能とする「直接完全リサイクル方法」を確立しました.この手法は,不純物S量の場合,ppmオーダーで同程度の合金であっても,通常のAl2O3るつぼ溶解材に比べCaOるつぼ溶解材の耐酸化性が優れていたことが確認されています.しかし,要因が不明であったため, 耐酸化性向上メカニズムの解明を目的としました.STEM-EDSや3DAPなどの微小領域での分析を駆使することで,不純物の偏析箇所や存在状態を明らかにしました.これによりSに限らず,SbやPbなどの多くの不純物が耐酸化性などの高温特性に与える影響を明らかにしています.また,製造コスト削減に向けて,希少元素含有量の削減向けた合金設計,および熱処理条件の最適化などを目的とした研究も行っています.

なお,本研究は茨城県つくば市に拠点を持つ,国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)との共同研究で行っています.

構造材料研究拠点HP: https://rcsm.nims.go.jp/

超耐熱材料グループHP:https://www.nims.go.jp/research/group/high-temperature-materials/ 

図 直接完全リサイクル法

代表論文

Chihiro TABATA, Kyoko KAWAGISHI, Jun UZUHASHI, Tadakatsu OHKUBO, Kazuhiro HONO, Tadaharu YOKOKAWA, Hiroshi HARADA, and Shinsuke SUZUKI, “Quantitative Analysis of Sulfur Segregation at the Oxide/Substrate Interface in Ni-Base Single Crystal Superalloy”, Scripta Materialia, 194(2021)113616, DOI:10.1016/j.scriptamat.2020.11.003.

受賞

            2022年8月 Chihiro Tabata Acta Student Award

            2023年3月 田畑千尋 小野梓学術記念賞

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(2024/03/26 更新)